人に教わるということ

 長いように感じた一年もあっという間に過ぎ去ってもう年の瀬ですね。

 暖冬といわれていますが、ここ数日気温がぐっと下がって厳しい寒さになってきた気がします。

 みなさんも風邪、インフルエンザにお気をつけください。

 

 今回は格闘ゲームを人に教わる事について書いてみたいと思います。

 私は格闘ゲームをはじめたきっかけが夫だったので、身近に上級者がいて一から格闘ゲームについて教えてもらう環境がありました。1つしかボタンが押せなかった頃から分かりやすく、辛抱強く教えてくれた夫はとても良いコーチだと思っています。その夫との関わり方について考えさせられる出来事がありました。

 

 まず、「格闘ゲームをやってみたい。」と思い触りだした頃。基本も仕組みも何も知らない状態なので素直に教えてもらったことを実践して成功すれば嬉しいし、出来なければ出来るまで練習する。というシンプルなものでした。当時の対戦相手はCPUやごく親しい友人のみだったので負けても気にならないし、出来ることが増える方が楽しくて負け続けていたのがだんだん勝てるようになっていくのも嬉しいと感じていました。

 

 次に「オンラインで知らない相手と対戦してみよう。」と思いランクマッチを始めた頃、知らない人との対戦に緊張する私の隣には夫がついてくれて適宜アドバイスをくれました。それがとても心強く、ありがたいと思いながら一生懸命打ち込みました。

 しかし、ランクマッチを続けていてもランクがなかなか伸びなくなった頃、咄嗟の判断が要求される場面で自分がやろうとしていた事と、瞬間飛んできたアドバイスとの違いに驚いて一瞬で頭を切り替えられなくて負けてしまう。という出来事が起こるようになりました。

 例えば対戦相手のHPがミリで起き上がりにCAの必殺技で切り返して来た時。こちらのHPは2割程度だったので食らえばKOされてしまいますが、その時私は先読みしてガードを固めていました。ガードでCAをやりすごした後、少し離れるのでどう反撃をすれば良いかと考えている間に「Vリバーサルで切り返せ。」というアドバイスが聞こえ、咄嗟にVリバーサルのコマンドを思い出して焦ってガード成立する前に入力。被弾してKO負け。という場面がありました。この場合、最適解はVリバーサルだったかも知れません。でも、ガードしてやり過ごしてから大技を放った相手の隙に何らかの反撃ができていれば勝利に繋がりそうな対戦でした。

  アドバイスからのミスによる負けに納得がいかなくて文句を言ってしまい「もう何も言わない。」と夫を怒らせてしまう事が頻繁に起こるようになり、対戦の時についてくれないのは不安だし、怖いしでどうしたらいいか分からなくなっていました。

 

 そんなある日、SNSでランクマッチ20戦の勝敗結果に一言添えて投稿する。という運動を目にしました。色んなランク帯のプレイヤーが勝ったり負けたりしている表は見ていて面白く、好調な人もいればトントンの人も、不調気味な人もいて、眺めていると果たして自分はどんな勝敗をしているのか気になりはじめました。夫が仕事に出かけている間に20戦の記録をやってみようと思い立ち一人でランクマッチをやってみました。

 やりはじめてまず思ったのは、ランクマッチを20戦するのはなかなかしんどいです。今まではLPが少し上がれば切り上げていたので一度に数をこなしていなかった事に気づかされました。はじめは20戦をメモ紙に正の字でカウントしていたのですが、せっかくなら対戦相手と勝敗についても少し記録を残そうとノートに番号を1~20まで書いてその横に対戦キャラ名、勝敗を記録できる簡単な表を作りました。マッチングしたら相手のキャラ名を記録、対戦後に勝敗を記入していると以前に比べて少し落ち着ける時間ができたように感じました。負け続けていてもノートを見るとこの負けは自分の力不足から来ているものだな。と負けを認められるようになり、今まで少しLPが減ると負け続けている自分が嫌になり、どんどん冷静に対戦することが出来なくなる悪循環に陥っていたのが記録をつけることによって冷静に見直す事ができるようになりました。

 20戦を終えたらノートを見返して対戦を思い出し、帰宅した夫にリプレイを見てもらいながらこの時どうすれば良かったのか、このキャラが来たら今後どう対戦していけばいいのか等アドバイスを求めるようになりました。

 

 この20戦の記録を取って、後で教わるというスタイルが自分には合っているのかも知れないと思いつつも、20戦後にLPが大幅にプラスになる事もなく、横這いの数字で終わってしまう事に焦り始めていました。自分よりランクが下の対戦相手にはほぼ安定して勝てるようになっているものの、自分よりも上のランクの人に当たると勝てない日々。どうして上の人に勝てないんだろう、何が足りないんだろうと模索していると夫に「自分より上のランクの人ばかり見るのではなく、下の人を処理できるようになれ。今はたまたまこちらの与ダメージが大きいから勝てているだけ。」と言われショックを受けました。せっかく勝てるようになった相手との対戦でも、ストイックに勝ち方にこだわらないといけないのか?純粋に勝てた事を喜んではいけないのだろうか?勝利を喜べなくなってまで格闘ゲームを続ける意味はあるのだろうか。と随分悩みました。

 もう辞めてしまおうかと思い悩んでいましたが、冷静になってもう一度言われたことを思い出してみました。そもそも言われた時に「処理」という言葉の意味がよく分かっておらず、とにかく処理というのはよくない事なのではないか。という先入観を抱いていました。意味を尋ねた所、上級者が圧倒的に勝つ状態を「処理」と言うと教えてもらいました。「圧倒的に勝つ」というのは一体どういう事なのか、考えた結果「パーフェクト勝ち」なのだろうと思いました。「与ダメージが多い」というのは相手に触れた時に与えるダメージが多い状態で、コンボや必殺技が上手くいってダメージレースに勝てた。という事なんだろうと思います。それらの単語から想像すると「下のランク帯の相手に与ダメージだけで勝つのではなく、守りもしっかりして被弾を少なくしてパーフェクト勝ちに近い状態にできるようになろう。」という意味だったと思いました。

 記録を見直すと、ランクマッチを始めると上のランクの人たちに当たって数戦でLPが落ちます。そこから上がるのにマッチングするのは大抵同ランクか下のランクの人たちです。そこでの対戦も大切にしながらただ勝つだけではなく、勝てそうな相手ならより完璧に近い勝利を目指すことで実力をつけよう。一つ一つの対戦を丁寧にやりなさい。というメッセージだったようです。

 思えば今まで私一人で悩んでいるつもりでしたが、夫も教えながら悩んでいたのでしょう。格闘ゲームを教わり続ける限り、お互い悩みは尽きないと思いますが成長していると感じる事も多いです。

 

 今回のテーマは自分の至らない部分も沢山書きましたし、生々しくて書きながら辛いエピソードもあるので公表するのをためらっていましたが、今までの経験はきっと成長に繋がると信じて記録として残しておきます。